以前の日記で視聴を予告していたグスコーブドリの伝記。奈良県のメンズデーに合わせ見てきたのですが…率直に言ってしまうと「自分でも理由が分からないくらい共感できないアニメ化」。

以下、「自分でも分からない理由」の解析のために感想を列挙しますが…書き始める前から【閲覧注意】を予感しているので続きを読むことは正直おすすめしませんw


  • 映画館到着が遅れ、見始めたのは映画開始6分経過時。「雨ニモマケズ」の朗読シーンから
  • 名作として知られるアニメ映画「銀河鉄道の夜」と同じスタッフの作品
    • 「銀河鉄道の夜」は「銀河鉄道」をベースにして宮沢賢治の世界を表現するような姿勢だった。「グスコーブドリ」も「銀河鉄道」ほどではないが似たような姿勢
    • もう少し乱暴に言えば漫画を書いたますむらひろし氏や監督の杉井ギザブロー氏の思う宮沢賢治の世界を表現している感じ。「銀河鉄道の夜をイメージさせる演出」の多用は銀河鉄道を見てる人にはいいが、正直それでええんか、とも思った。
      • 一応断っておくけど、銀河鉄道の夜のアニメ版は見てるし(おそらく私が映画館で見た最初の映画が銀河鉄道の夜)、その演出も結構好き。だけど、そう思う。
  • 宮沢賢治は原作で自然災害に「近代科学」と「自己犠牲精神」で勝利する主人公を描いた
    • アニメ版は自然災害に「近代科学」と「魔法?(でコーティングした自己犠牲精神)」で勝利する主人公を描いた、という印象
      • この「魔法みたいな夢みたいな…」的なアニメ版固有の設定がどうしても受け付けなかった
      • 原作そのものに「ココ数枚原稿ナシ」がある銀河鉄道とは違い、グスコーブドリは完結した作品。つながりの悪いシーンを夢っぽく演出して逃げる必然性がない。
      • 宮沢賢治は最後の解決策もあくまで「近代科学」と「自己犠牲精神」の合わせ技として表現した。
        • アニメ版は「魔法?(でコーティングした自己犠牲精神)」で解決してしまった感がある。いい悪いではなく、気にくわない。
        • 実は「魔法」で解決できるようにアニメ版では原作にはない地学的設定が足されているのですが、これについては後述する。
  • 原作最大の問題であった「火山活動で地球の温暖化を図る」という設定のアニメ化について
    • 一般論として大規模火山活動が起こると、二酸化炭素も出るが大量の火山灰も出て太陽光を遮り、地球は一時的に寒冷化するとされる。これはグスコーブドリを現在アニメ化する際のネックだと(地学屋さんからは)考えられていた。
    • 今回のアニメ化では、「二酸化炭素を多く含む火山」という設定が加えられた。
      • 世の中には炭酸塩鉱物のマグマを吐き出す山もあれば、二酸化炭素で過飽和状態だった火山湖がちょっとした刺激で二酸化炭素を大量放出したこともある。ちょっとした刺激で爆発し、二酸化炭素ばかりを吐き出す、ということもSF的にはOKといえばそう。
      • とはいえどうも理屈くさくて気にくわない。
      • ただ、この設定を考えつくべくいろいろ考え込んでいたシーンは結構楽しかっただろうな、と思う。地学考証に東大震研の広報官をやってる女史の名前があったし、経緯ぐらいは知ってるだろう。「地学関係のとこで今も粘ってたらその経緯を人づてにでも聞くことができたろうに…」と思い、それだけは少々悔しかった(まぁ資格がなかっただけの話ではあるがw)。
  • 3Dモデルアニメーションのシーンがあったんだけども…
    • とりあえず、基本的にフルモデルアニメーションで作ったとおぼしき、あの和漢折衷な雰囲気のあの夢シーンそのものが必要だったのか?俺は不要だったと思う。
    • あのシーン以降イーハトーブの街に出て、モデルアニメで描かれたとおぼしきモノレールや飛行船がたくさん出てくるわけで。そのための前置き的な意味なのかもしれんが…やっぱ不要だったと思う。
    • てか、そんなモデルアニメのモノレールや飛行船が必要以上に揺れている、というか傾きすぎてる気がしてならなかった。躍動感を出したい演出だって事はわかるけど…。
      • まぁ、幼少期にちびまるこちゃんのような立体感皆無のアニメで育ち、3D酔いするから近頃のゲームに手を出せない、なんていう保守的世代のうめき声に過ぎないのかも知れない。
  • とりあえず、女の子の声は女の子が当てるか、女の子の声を出すのに手慣れた女性声優に任せるべきだと思った。個別の女優さんを批判したいのではなく、あくまで一般論として。
    • そういやネリの扱いも原作とアニメでは結構違ったね。意図は分からんけど。
  • とにかく、アニメ化された作品にさっぱり納得できていないし、こんだけ山ほど納得できない点を列挙できるにもかかわらず、「じゃあ、どうすればいいのか?」という対案が全く思い当たらない。私には理解できなかっただけでこれはこれで一つの完成品なんでしょう。それがなにより悔しい。
ちなみに、客は女性2人組、カップル1組、男性単体の客が私含めて2名、の計6人でした。私が見に行った映画の中では比較的女性客層の比率が高い、という印象もあり。もしかすると、あまり男性向けじゃない造りなんかも知れません。

というか、直前まで人と腹の探り合いを延々とやっていたので、それに映画の見方まで引っ張られた感は自分自身あるんよね…。これからレビューサイトでも見に行って、ストレートに見た人の感想でもチェックしてくるかw